自筆証書遺言・公正証書遺言とは?

自筆証書遺言・公正証書遺言とは?

遺言にはいくつかの方式がありますが、実務上よく使われるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
この記事では、自筆証書遺言と公正証書遺言の概要やそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。

遺言とは

遺言とは、ある人の最終の意思表示について、その人の死亡後に効力を発生させるための制度のことをいいます。
たとえば、遺言によって、自分が亡くなった場合の遺産を誰に取得させるのかを定めることができます。
なお、「遺言」は、法律用語としては、「ゆいごん」ではなく「いごん」と読みます。

遺言事項

遺言することができる事項(遺言事項)を無制限に認めると、紛争の原因になりかねません。
そこで、法律で遺言事項は限定されています。
たとえば、次のような事項について遺言をすることができます。

・認知(民法第781条第2項)
・相続人の廃除(民法第893条)
・祭祀主宰者の指定(民法第897条)
・相続分の指定(民法第902条)
・特別受益の持戻しの免除(民法第903条)
・遺産分割方法の指定(民法第908条)
・遺産分割の禁止(民法第908条)
・遺贈(民法第964条)
・遺言執行者の指定(民法第1006条)

たとえば、「子どもたちは仲良く暮らしていくように」といった遺言をしても、遺言事項に該当しないため、法律上の効力はありません。

遺言の方式

遺言には次のような方式があります(民法第967条)。

普通方式 自筆証書遺言(民法第968条)
公正証書遺言(民法第969条、第969条の2)
秘密証書遺言(民法第970条~第972条)
特別方式 死亡危急者遺言(民法第976条)
伝染病隔離者遺言(民法第977条)
在船者遺言(民法第978条)
船舶遭難者遺言(民法第979条)

これらのうち、実務上よく使われる方式は、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言書の全文・日付・氏名を自書し、これに印を押して作成する遺言のことです(民法第968条第1項)。

第968条
1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

遺言書の全文・日付・氏名を自分で書く必要があるため、これらをパソコンで作成することはできません。
ただし、自書によらない財産目録を添付する方式は認められています(民法第968条第2項)。

第968条
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

なお、押印は実印による必要はなく、指印によることもできます(最高裁判所平成元年2月16日判決)。

最高裁判所平成元年2月16日判決
「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の全文、日附及び氏名を自書した上、押印することを要するが(民法九六八条一項)、右にいう押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)をもって足りるものと解するのが相当である」

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです(民法第969条、第969条の2)。

第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
① 証人二人以上の立会いがあること。
② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
③ 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
④ 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
⑤ 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

公証人は、裁判官・検察官・弁護士などを長年務めた法律の専門家の中から法務大臣が任命した人のことで、実質的な公務員に該当します。

自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言には、次のようなメリット・デメリットがあるといわれています。
メリット

・費用がかからない
・誰にも知られずに作成できる
・公正証書遺言と比べて手軽に作成できる

デメリット

・方式の不備で無効とされるリスクがある
・自書する能力が必要となる
・遺言書の紛失や偽造のリスクがある
・家庭裁判所による検認が必要となる


※自筆証書遺言書保管制度を利用することでデメリットをカバーできる場合もあります。

公正証書遺言には、次のようなメリットとデメリットがあるといわれています。
メリット

・方式の不備で無効とされるリスクがない
・遺言書の紛失や偽造のリスクがない
・自書する能力がなくとも作成できる
・公正証書遺言の検索システムがある
・家庭裁判所による検認が必要ない

デメリット

・費用がかかる
・証人の立会いが必要となる
・自筆証書遺言と比べて作成に手間がかかる

まとめ|遺言書の作成は弁護士に相談を

自筆証書遺言と公正証書遺言には、それぞれメリット・デメリットがあります。
当事務所では、両者のメリット・デメリットを踏まえた上で、基本的には公正証書遺言の作成をおすすめしています。
公正証書遺言を作成するにあたっては、遺言書の文案作成や公証人とのやり取りが必要となります。
これらの手続きを弁護士にご依頼いただくことで、スムーズに公正証書遺言を作成することができるでしょう。
遺言書の作成を検討している場合、弁護士にご相談ください。