療養看護型の寄与分とは?|寄与分のパターン③

療養看護型の寄与分とは?|寄与分のパターン③

実務上、寄与分のパターンは5つに分類されています。
この記事では、寄与分のパターンのうち「療養看護型」について解説します。

寄与分とは

寄与分とは、相続人の中に被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与(貢献)をした人がいる場合に、その貢献を考慮して相続分を修正する制度のことです(民法第904条の2第1項)。

療養看護型の寄与分とは

療養看護型の寄与分とは、被相続人の療養看護に従事したことによって寄与分が認められる場合です。
療養看護には介護も含まれ、実務上、療養看護型の寄与分として主張されるケースの多くは介護によるものといわれています。

盛岡家庭裁判所昭和61年4月11日審判
「申立人は…20年余にわたり病弱で老齢の被相続人と同居して扶養し、殊に被相続人の痴呆が高じた昭和46年以降その死亡に至るまでの10年間は常に被相続人に付添って療養看護を要する状態となり、申立人がこれに当たってきたのであり、少くとも後半の10年間の療養看護は、親族間の扶養義務に基づく一般的な寄与の程度を遥かに超えたものというべく、被相続人は他人を付添婦として雇った場合支払うべき費用の支払を免れ、相続財産の減少を免れたことは明らかであり、従って申立人には、被相続人の療養看護の方法により被相続人の財産の維持につき特別の寄与があったものというべきである」

療養看護型の寄与分のポイント

寄与分の一般的な要件は次のとおりです。

①特別の寄与であること
②対価を受けていないこと
③被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること


関連記事
寄与分とは?|寄与分の基本事項を解説

これらの要件を療養看護型で主張する場合のポイントを紹介します。

特別の寄与であること|特別性

療養看護型の寄与分において「特別の寄与」といえるためには、療養看護の必要性、継続性、専従性が必要と考えられています。

療養看護の必要性

被相続人が療養や介護を必要とする状態であったといえなければ、療養看護型の寄与分は認められません。

広島家庭裁判所呉支部平成22年10月5日審判
「相手方Eは…被相続人G…の家事を手伝ったことは認められるけれども、その間…被相続人Gの健康状態も比較的良好であったことからすれば、相手方Eのした家事の援助は寄与分が認められるほどの療養看護に当たるとはいえない」

実務上、療養看護の必要性の有無は、被相続人が介護保険における「要介護度2」以上の状態にあるかどうかが一つの目安とされています。

大阪高等裁判所平成19年12月6日決定
「被相続人は平成10年頃からは認知症の症状が重くなって排泄等の介助を受けるようになり、平成11年には要介護2、平成13年は要介護3の認定を受けたもので、その死亡まで自宅で被相続人を介護したCの負担は軽視できないものであること…等本件の諸事情を総合考慮すれば…遺産の…15%をもってCの寄与分と定めるのが相当というべきである」

また、被相続人が入院したり、施設に入所したりしていた期間については、十分な療養看護がなされていたとして療養看護の必要性が否定されることがあります。

継続性

療養看護が一定期間継続していなければ、「特別の寄与」とはいえないとされています。
どれくらいの期間が必要なのかについてはケースバイケースですが、1年が一つの目安といわれています。

専従性

療養看護が片手間で行われているような場合には、「特別の寄与」とはいえないとされています。
「特別の寄与」といえるためには、かなりの負担を要するものでなければなりません。
たとえば、週末だけ被相続人の介護をしていたといったケースでは、寄与分は認められない可能性が高いでしょう。

対価を受けていないこと|無償性

療養看護型の寄与分においても、対価を受けていないことが要件となります。
ただし、完全に無償である必要はなく、通常の介護報酬に比べて著しく少額であれば、無償性が認められると考えられています。
なお、被相続人の自宅に無償で同居していた場合などには、実質的な対価を受け取っていたとされ、無償性が否定される可能性があります。

被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること

被相続人の療養看護に従事した結果として、被相続人の財産を維持又は増加させたことが必要です。
具体的には、療養看護によって、被相続人が看護費用の支出を免れたことが必要です。

療養看護型の寄与分に関する質問

療養看護型の寄与分の額はどのように算定されますか?

実務上、次の計算式によって算定されるのが基本です。

報酬相当額(日当)×療養看護日数×裁量割合

報酬相当額(日当)は、介護保険における介護報酬基準を参考に算定されることが多いです。

横浜家庭裁判所川崎支部平成29年5月31日審判
「介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成11年4月30日厚生省令第58号)は、要介護4を要介護認定等基準時間が90分以上110分未満である状態又はこれに相当すると認められる状態、要介護5を要介護認定等基準時間が110分以上である状態又はこれに相当すると認められる状態と定めている。一方、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)の指定居宅サービス介護給付費単位数表(平成26年度介護報酬改定前のもの)によれば、身体介護が中心である場合の訪問介護費は、所要時間90分以上120分未満の場合につき6670円(1点10円で円単位に換算。以下同じ)、120分以上150分未満の場合につき7500円になる。以上によれば、要介護4の場合は所要時間90分以上120分未満の訪問介護費である6670円を、要介護5の場合は所要時間120分以上150分未満の訪問看護費である7500円をそれぞれ介護報酬(日当)として採用するのが相当である」

また、寄与分の判断には家庭裁判所の裁量が認められているため、個別の事案に応じて「裁量割合」として寄与分の額が減額されることがあります。
療養看護型の裁量割合は0.7あたりが平均値といわれています。

東京高等裁判所平成29年9月22日決定
「被相続人と相続人との身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献は相続分自体において評価されているというべきであるところ、抗告人は被相続人の子であって、抗告人がした介護等には、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される部分も一定程度含まれていたとみるべきこと、抗告人は、被相続人所有の自宅に無償で居住し、その生活費は被相続人の預貯金で賄われていたこと、被相続人は、第三者による介護サービスも利用していたことからすれば、原審判が、第三者に介護を依頼した際に相当と認められる報酬額に裁量的割合として0.7を乗じて寄与分を算出したことが不当であるとはいえ…ない」

被相続人を精神的に支えた場合、療養看護型の寄与分は認められますか?

療養看護型の寄与分が認められるためには、療養看護によって、被相続人が看護費用の支出を免れたことが必要です。
したがって、被相続人を精神的に支えたというだけでは療養看護型の寄与分は認められません。

まとめ

この記事では、療養看護型の寄与分について解説しました。
寄与分を主張したい場合には、その要件を寄与分のパターンに応じて適切に主張・立証する必要があります。
寄与分でお悩みの方は、弁護士にご相談ください。