
財産管理型の寄与分とは?|寄与分のパターン⑤
この記事では、寄与分のパターンのうち「財産管理型」について解説します。

寄与分とは、相続人の中に被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与(貢献)をした人がいる場合に、その貢献を考慮して相続分を修正する制度のことです(民法第904条の2第1項)。
財産管理型の寄与分とは、被相続人の財産を管理したことによって寄与分が認められる場合です。
たとえば、被相続人の土地を売却するにあたって、土地上の建物の借家人との立退交渉や家屋の取壊しなどに尽力し、土地の売却価格を増価させた場合などに認められます。
長崎家庭裁判所諫早出張所昭和62年9月1日審判
「土地売却にあたり借家人の立退交渉、家屋の取壊し、滅失登記手続、売買契約の締結等に努力したとの事実は認められるので、売却価格の増加に対する寄与はあったものとみることができる。そして、その程度は、不動産仲介人の手数料基準をも考慮し、300万円と認めるのが相当である」
また、被相続人の建物の営繕費などを負担したことを理由に寄与分が認められた事案があります。
盛岡家庭裁判所昭和61年4月11日審判
「申立人夫婦が…建物についての営繕費や庭木の手入れ費用を負担してきたこと…により本件遺産の維持に特別の寄与があったことは明らか」である
特殊なケースとして、被相続人の不動産に関する訴訟において、証拠収集に奔走し、逆転勝訴の結果を得たことを理由に寄与分が認められた事案があります。
大阪家庭裁判所平成6年11月2日審判
「被相続人が遺産不動産に係る訴訟の第一審で敗訴した後、Xが…証拠の収集に奔走し、遂に控訴審において逆転勝訴の結果を得ることに顕著な貢献があったことが認められ、今日の遺産の存在についてその功績を無視することはできないから、同人の右行為は、訴訟代理人である弁護士の指導があったであろうことを考慮しても、なお親族としての扶助義務の範囲を超え、かつ単なる精神的寄与以上のものであって、遺産の維持につき特別の寄与があったというべきである」
寄与分の一般的な要件は次のとおりです。
これらの要件を財産管理型で主張する場合のポイントを紹介します。
財産管理型の寄与分において「特別の寄与」といえるためには、財産管理の必要性、継続性が必要と考えられています。
被相続人の財産を管理する必要性がなければ、「特別の寄与」とはいえないとされています。
たとえば、被相続人の賃貸物件の管理を管理会社に委託している場合には、財産管理の必要性は認められません。
財産管理が一定期間継続していなければ、「特別の寄与」とはいえないとされています。
たとえば、数か月間だけ財産管理をしたといった程度では、継続性は否定されるでしょう。
財産管理型の寄与分においても、対価を受けていないことが要件となります。
ただし、完全に無償である必要はなく、通常の管理報酬等に比べて著しく少額であれば、無償性が認められると考えられています。
大阪家庭裁判所平成19年2月8日審判
「相手方は、寄与分を主張する。すなわち、相手方は…被相続人が行っていた駐車場の経営を引き継いで管理、経営を行ったことにより、被相続人の財産の維持増加に貢献し…寄与分があるとの主張である」
「そこで、検討するに…駐車場の管理について、相手方が具体的に行動し始めたのは平成13年2月ころからであり、駐車場の清掃、苦情への対応、顧客離れを防ぐための賃料の減額などを行っていたものであるが、相手方が平成14年1月から駐車場管理の報酬として月額5万円を取得していたことに照らし、相手方の駐車場の管理について特別の寄与があるとまで認めるのは困難である」
被相続人の財産を管理した結果として、被相続人の財産を維持又は増加させたことが必要です。
実務上、以下の計算式によって算定されるのが基本です。
第三者に委託した場合の報酬額×裁量割合
寄与分の判断には家庭裁判所の裁量が認められているため、個別の事案に応じて「裁量割合」として寄与分の額が減額されることがあります。
被相続人の不動産の公租公課や火災保険料を負担した場合など、財産管理に要する費用を負担した場合にも財産管理型の寄与分が認められる可能性があります。
この場合、金銭等出資型の寄与分と基本的には同じであるといわれています。
寄与分の額は、現実に負担した額が基準となりますが、裁量割合によって減額されることもあります。
被相続人の資産を株式や投資信託によって運用したことで売却益や分配金等が得られたとして寄与分が主張された事案で、寄与分を認めなかった裁判例があります。
大阪家庭裁判所平成19年2月26日審判
「株式、投資信託による資産運用には利益の可能性とともに、常に損失のリスクを伴う。しかるに、一部の相続人が被相続人の資産を運用した場合、その損失によるリスクは負担せずに、たまたま利益の生じた場合には寄与と主張することは、いわば自己に都合の良い面だけをつまみ食い的に主張するものであり、そのような利益に寄与分を認めることが相続人間の衡平に資するとは、一般的にはいいがたい」
この記事では、財産管理型の寄与分について解説しました。
寄与分を主張したい場合には、その要件を寄与分のパターンに応じて適切に主張・立証する必要があります。
寄与分でお悩みの方は、弁護士にご相談ください。