寄与分とは?|寄与分の基本事項を解説

寄与分とは?|寄与分の基本事項を解説

相続人による被相続人に対する貢献を相続に反映させる制度として寄与分があります。
この記事では、寄与分の基本的な事項について解説します。

寄与分とは

寄与分とは、相続人の中に被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与(貢献)をした人がいる場合に、その貢献を考慮して相続分を修正する制度のことです(民法第904条の2第1項)。

第904条の2
1 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

寄与分は、相続人間の協議によって決定されるのが原則ですが、最終的には家庭裁判所の裁量によって決定されます。

最高裁判所昭和60年7月4日決定
「寄与分を定める処分にかかる審判は、家庭裁判所が共同相続人の実質的な衡平を実現するため合目的的に裁量権を行使してする形成的処分」である

寄与分が認められるとどうなるのか

寄与分が認められると、その相続人の相続分が修正され、取得できる財産の額が増加します。
具体的には、相続財産から寄与分を差し引いた「みなし相続財産」を算定し、これを各自の法定相続分で分配した上で、寄与者に寄与分を加算します。
次の事例で検討してみます。

相続財産:4000万円
相続人:被相続人の子どもXとYの2名(各自の法定相続分は1/2)

この事例では、XとYの原則的な相続分の額は次のようになります。

Xの相続分の額:4000万円×1/2=2000万円
Yの相続分の額:4000万円×1/2=2000万円

一方、Xに1000万円の寄与分が認められると、相続分の額は次のように修正されます。

みなし相続財産:4000万円-1000万円=3000万円
Xの相続分の額:3000万円×1/2+1000万円(寄与分)=2500万円
Yの相続分の額:3000万円×1/2=1500万円

寄与分制度がある理由

寄与分制度は、相続分を算定するにあたって、被相続人の財産の維持又は増加に対する特別の貢献を考慮することで、相続人間の公平を図るために存在します。
また、被相続人の財産に対する寄与を清算するための制度であるという理解もあります。

寄与分が認められるためには

寄与分が認められるための要件は、次の3つに整理することができます。

①特別の寄与であること
②対価を受けていないこと
③被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること

特別の寄与であること|特別性

寄与分が認められるためには、相続人の貢献が特別の寄与といえるものでなければなりません。
「特別の寄与」とは、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献のことを意味します。

東京高等裁判所平成29年9月22日決定
「被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献は相続分自体において評価されているというべきであり、寄与分は、これを超える特別の貢献をした場合に,相続人の行為によって被相続人の財産が減少することが防止できた限度で認められる」

夫婦の協力義務(民法第752条)や親族間の扶養義務(民法第877条第1項)の範囲内の貢献は、特別の寄与とはいえません。

対価を受けていないこと|無償性

寄与分が認められるためには、原則として、その貢献が無償で行われたことが必要です。
対価を得ている場合、それによって決済されているため、寄与分を認める必要はないからです。
ただし、対価を得ていたとしても、それが対価として到底十分とはいえないような場合には、寄与分が認められる余地があります。

大阪高等裁判所平成2年9月19日決定
「被相続人の事業に関して労務を提供した場合、提供した労務にある程度見合った賃金や報酬等の対価が支払われたときは、寄与分と認めることはできないが、支払われた賃金や報酬等が提供した労務の対価として到底十分でないときは、報いられていない残余の部分については寄与分と認められる余地がある」

被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること

寄与分が認められるためには、相続人の貢献と被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係がなければなりません。
裁判例では、相続人が農業に従事した結果、被相続人が所有していたみかん畑が荒れて取引価格が低下するのを防げたとして因果関係を認めたものがあります(大阪高等裁判所平成27年10月6日決定)。

大阪高等裁判所平成27年10月6日決定
相続人が「農業に従事した結果、みかん畑として利用されている各土地がみかん畑として維持され、遺産の価値の減少を免れたことから、みかん畑として利用されている各土地の評価額(相続開始時)の30パーセントを寄与分とするのが相当である」

一方で、被相続人を精神的に援助していたとしても、それが財産の維持や増加に結び付いていなければ、寄与分は認められません。

寄与分の類型

寄与分には5つの代表的な類型があると考えられています。

①家業従事型
②金銭等出資型
③療養看護型
④扶養型
⑤財産管理型

家業従事型

家業従事型の寄与分とは、被相続人の事業(家業)に関する労務の提供によって寄与分が認められる場合です。

金銭等出資型

金銭等出資型の寄与分とは、被相続人に対して財産上の給付をしたことによって寄与分が認められる場合です。

療養看護型

療養看護型の寄与分とは、被相続人の療養看護に従事したことによって寄与分が認められる場合です。

扶養型

扶養型の寄与分とは、被相続人を扶養したことによって寄与分が認められる場合です。

財産管理型

財産管理型の寄与分とは、被相続人の財産を管理したことによって寄与分が認められる場合です。

寄与分を定める手続き

協議

寄与分の決定は、相続人間の協議によるのが原則です。

調停・審判

協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停・審判によって寄与分を決定することになります。
具体的には、寄与分を定める処分調停を申し立て、調停不成立となれば自動的に審判手続きに移行します。
遺産分割調停の中で寄与分を主張することも可能ですが、遺産分割調停が不成立となり審判手続きに移行した場合には、別途寄与分を定める処分審判を申し立てる必要があります。
なお、現行民法では、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割において、寄与分の主張をすることは原則としてできないとされています(民法第904条の3)。

寄与分に関する質問

遺言で寄与分を指定することはできますか?

寄与分は遺言で指定できる事項ではないため、被相続人が遺言で特定の相続人の寄与分を指定したとしても効力はありません。

相続人以外の人の貢献にも寄与分は認められますか?

寄与分が認められるのは相続人に限定されています。
ただし、相続人以外の人による貢献を相続人の貢献と同視できるような場合には、相続人の寄与分として考慮することができると考えられています。
たとえば、相続人とその配偶者が一体となって貢献をしたような場合には、配偶者が貢献した分についても相続人の貢献として考慮する余地があるでしょう。

東京高等裁判所平成元年12月28日決定
「共同相続人間の衡平を図る見地からすれば…相続人の配偶者ないし母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮することも許されると解するのが相当である」

相続開始後の貢献でも寄与分が認められることはありますか?

寄与分の対象となるのは、相続開始前(被相続人が亡くなる前)の行為に限られると考えられています。
相続開始後に相続財産を維持又は増加させたとしても寄与分は認められません。

東京高等裁判所昭和57年3月16日決定
「相続開始後に相続財産を維持又は増加させたことに対する貢献は寄与分として評価すべきものではない」

まとめ

被相続人に何らかの貢献をしただけでは寄与分は認められません。
寄与分を主張したい場合には、寄与分が認められるための要件を的確に主張・立証する必要があります。
寄与分でお悩みの方は、弁護士にご相談ください。